ヤシマノート

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ベストセラー小説の書き方 【書評】

書評をどう書くべきか。よく理解していないが、さしあたって未読者の興味を削がないよう配慮したい。

訳者があとがきで述べているように、本書は小説の書き方というハウツーであるわりに読み物として面白く出来ている。

クーンツ氏は一貫して、これから小説を書き初める人に、SFやミステリーなどのジャンルものではなく、大衆一般小説を選ぶよう勧めている。ジャンル作家として評価された彼は、他のジャンルを書いても編集者から受け入れられなかった経験があるからだ。

ジャンル小説がユニークさによる誤魔化しを効かせられる一方、大衆小説には基本的な難しさがあり、作者を育てるのにこのハードルが適度に機能する。ジャンル作品が大衆作品に比べて読者層が狭くなり拡散し辛くなる点も問題にしている。

著者はジャンルに関してしつこく書いていたが、もちろんそれだけでなく様々なテクニックを示してくれた。僕が気に留めた内容を要約して下記に並べる。これでもほんの一部に過ぎない。カッコ内はページ番号だ。

作家として

謙虚さを忘れずに。思考、注意、職人気質、物語性の4つを忘れずに。(44)

神のように登場人物を知り尽くす(208)

テーマは複雑で説教色がうすい(174)

古い物語を並び替えているだけで、新しいプロットなど無い(268)

規則を破る前に、規則の範囲内で成功作を書く(195)

仕事場はつねに整理整頓する(311)

読者について

読者は前に前に進みたがるものだ(156)

ありがちなシーンはやめて意表をつく場面を考案すべき(190)

具体的な手法

実生活の経験を調理しろ(77)

他人の話でも良い(83)

他の小説の中の何気ない言葉が君の物語の中心になる(84)

六時間以上ぶっ続けてかけばアイデアが湧く(85)

爆弾を「落とす」ではなく「ぶっ放す」という強い動きのある動詞を選ぶ(121)

リアリティは文体テクと正確な細部描写で得られる。文体テクは自ら学ぶ他ない。(123)

じらす。時間にせまらせる(141)

終わりに近づいたらスピードを上げる(165)

時間的なずれを使う。起きた順に並べる必要なし(187)

ヒロイックな主人公。高潔、有能、勇気、好感、不完全さ。善悪の区別。殺人に嫌悪感をもよおすなど。(192)

ヒロインに強い個性を与え、ストーリーに変化を(200)

アクションと性格描写を結びつける(206)

会話が2,30%以下の小説は売れない(249)

陳腐な決まり文句をやめる(256)

会話、叙述の視点、場面転換をつかいこなす(268)

この小説を読もう

ディケンズ、トロロープ、メルヴィルは当然のものとして、最終章で、すごい人数の作家を紹介されていた。列挙しようか考えたが、ひとまず割愛する。

読後感

僕自身はここだけの話、小説を書いてみた事がある。書いてみたと言っても、最後まで書ききった訳ではない。著者の言うように、まずはプロットを明確にしてから、筆を走らせるのが大事であると思う。登場人物の成り行きに任せたストーリー展開は見るも無残な結果に陥るだろう。現に僕の小説も道を外しそこいらを彷徨う羽目になった。もしも小説を書こうと思うならプロットや設定を事細かく決めてからにしたい。

一方で、文体を成熟させるトレーニングもしなければならない。これについては、日常の出来事からプロットを固め、それを文章にする習慣が役に立つだろう。まさにブログや日記である。まだまだ文章力の乏しい僕なので、日記的な発信で鍛えていこうと思う。

日記の良い点は、小説に必要な表現が当てはまるところだ。感情、行動、風景、視点描写など、やればいくらでもやれる。ただ自身の考えを語るような記事は退屈で表現の幅に広がりを見せないように思う。

題名は小説に関してであるが、何を読むにしても題名に縛られて読んではいけない。お客の視点に立つこと、緩急をつけることなど、異分野にも通ずることも書かれている。抽象化なんて言われ方を見かけるが、僕も何かを読むときはそう言う変換を心掛けているつもりだ。

小説の書き方。このような内容を知ると当たり前だが、小説を読む楽しみもひとしお深みを増す。書くことに興味が湧かなくとも、読み手であれば、こういう本は読む価値があると思う。これを読んだ後に小説を書きたくならない保証は出来ないが…。人間は知ることにより興味の湧く生き物である。

僕は、楽器を演奏して音楽をより深く聴けるようになったし、絵も描いてみてから人の絵の素晴らしさが見えるようになった。小説や文章においても同様な楽しみをもたらしてくれるならば、一度小説を書ききってみるのも良いだろうと思う。クーンツ氏の言いつけを守ろうが、守らなかろうが、ずいぶんな長丁場になるのだろうが…。

実のところ僕はフィクション小説を多く読む方ではない。そんな自分の小説に対する興味を活性化させるべく手にしたところ、本書は正解だった模様だ。

ストーリー以外にも注視すべき要素を知る事が出来て、今から小説の粗探しをするのが実に楽しみである。

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)